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セントアンナの奇跡 [映画 *さ]


セントアンナの奇跡 プレミアム・エディション [DVD]
「セントアンナの奇跡」、観ました。

第二次世界大戦中のイタリア・トスカーナの村。
部隊からはぐれ敵地であるこの村にやって来たアメリカ軍兵士と、村人たちの交流を通して、戦争がもたらす悲劇を描き出す。

物語は1983年のニューヨークから幕を開けます。
定年を間近に控えた郵便局員が、窓口にやって来た客をいきなり射殺してしまう。
捜査を始めた警察は、犯人の部屋から石像の頭部を発見。
この石像は第二次大戦中、ナチスドイツによって爆破された橋に施されていたものであり、長い間その行方が分からなくなっていたものだったのです。
その橋はイタリア・フェレンツェに架かっていた・・・。
何故、イタリアで紛失した石像がニューヨークの、郵便局員の部屋にあったのか?
そして何故、郵便局員は客の男を撃ち殺してしまったのか?
サスペンスタッチの導入部で、これがどう繋がるのか興味深々。

ここでシーンは第二次大戦中のトスカーナへと移ります。
冒頭の謎を残したまま、物語は戦争映画へと様相を変えて行くのです。
黒人ばかりで編成された“バッファロー・ソルジャー”と言われる歩兵部隊は、今まさに川を越えてドイツ軍が待ち構える敵陣へと歩を進める。
が、集中砲火を浴びた部隊は死傷者を出し、撤退。
しかしその時、混乱しながらも川を渡り、秘かに敵地へと入り込んだ4人の兵士がいたのです。
このうちの一人、身体は巨大だけど気は優しいトレインが、怪我をして倒れている少年を助けたことで運命が動き出します。
ナチスの目をかわしながら、少年を抱えたまま進む4人は、村にある一軒の家に助けを求める、ここからアメリカ兵と村人たちの交流が始まるのです。

この村での出来事が、後のニューヨークの事件へと繋がる伏線になっているという訳。
いったいどういう経緯でそうなったのか、観ていくうちに明らかになるのですが、それはとても心苦しいものでした。
戦争っていうものは、何十年経とうとも癒せない傷を人の心に残すものなんだと、改めて考えさせられました。
映画のタイトルにもなっている“奇跡”。
確かに怪我をした少年はどこか不思議な力をもっているように見え、時に奇跡を呼び寄せる事が出来るかに思えるところもあるし、何よりこの一連の出来事の顛末も奇跡の力が働いていたと言えるのかもしれません。
でも、奇跡という言葉から連想するような救いとか、喜びとかいったイメージを吹き飛ばすほど、戦争シーンの凄まじさ、人々の日常を破壊するさまは悲惨でありました。

また、4人のアメリカ兵が所属していた“バッファロー・ソルジャー”が黒人で編成されていたと言うことからも感じるかもしれませんが、黒人に対しての差別意識の強さも語られます。
白人上官の部下たちに対する態度、母国アメリカで受けてきた冷遇が描かれ、それらの差別を受けてきた4人の兵士が、トスカーナで初めて差別から解き放たれ心の平安を感じる、というのも何だか複雑な思いになってしまいます。

163分と長丁場であり、むごたらしい場面も多いのですが、冒頭の謎めいた事件がどういった風に結ばれるのかが知りたくて、一気に鑑賞してしまいました。
ネタバレ、反転します。(最後にあの少年が生きていて新聞記事で事件のことを知った彼が、郵便局員である元兵士の保釈金を払い、再会を果たす。すごく出来すぎているけれど、これが奇跡なんだろうか?と考え込んでしまいました。私なりに考えたのは・・・トスカーナの惨劇で同僚兵士も、良くしてくれた村人も皆死んでしまい、ただ一人生き残った男の心の傷と怒りは長い時間でも癒しきれなかった。そして、裏切り者との再会で爆発した。この郵便局員の心の内を知りえるのは、他でもない同じ体験をした元少年だけなのかもしれません。辛い記憶を共有する人がいてくれることで、もしかしたら心のおもりが少しは軽くなるのかもしれない。この最後の出会いが、癒しを与えられるのなら、これこそ本当に奇跡の巡り合わせなのかな・・・なんてことです。 

MIRACLE AT ST.ANNA  (2008)
 監督 スパイク・リー
 デレク・ルーク マイケル・イーリー ラズ・アロンソ オマー・ベンソン・ミラー
 ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ ヴァレンティナ・チェルヴィ
 マッテオ・スキアボルディ ジョン・タートゥーロ ジョン・レグイザモ
 ケリー・ワシントン ジョセフ・ゴードン=レヴィット D・B・スウィーニー
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コッスン

わー、ご覧になったんですね。
ツーテイ(青くない)でてたでしょー!!
黒人という扱いじゃなく、
一人の人間としてはじめで接してもらった
気持ちとか
神は信じないとか
切なくなりました。
あの子が、あのおっさんになったんですねー。
結構、感動した
by コッスン (2010-02-18 21:12) 

hash

>一気に鑑賞
悪条件も重なったせいか、長さに負けました。^^;
改めて、観る機会があれば、違った感想になるかもしれません。
by hash (2010-02-18 22:48) 

Betty

DVDの予告で気になっていた1本です。
なかなか印象に残りそうな映画ですね。
by Betty (2010-02-19 12:49) 

heibay

この映画、美術品の宣伝にひかれて、行きました。
そこのところは、がっかり。
そして、黒人問題の描き方より、
ナチス=悪 という単純な構造でやってしまったのが....
ナチスは、米国の資金と援助で、戦争をやっていたことまで
スパイク・リー監督には、やって欲しかったのですが、
すると上映できなくなってしまいますね。

by heibay (2010-02-22 20:01) 

てくてく

shinさん。
こんばんは^^
いつもnice!をありがとうございます。

クマさん。
こんばんは^^
いつもnice!をありがとうございます。

コッスンさん。
こんばんは^^
まったく遠く離れた異国で
安らぎの地を見つける・・・
っていうのは皮肉でしたね。
母国での彼らの扱いとかを考えると。

あの子があのおっさんになるとは、
面影なさ過ぎっちゃ、なさ過ぎです(笑)
nice!&コメント、ありがとうございます。

ritton2さん。
はじめまして、こんばんは^^
nice!をありがとうございます。

hashさん。
こんばんは^^
hashさん、確か椅子が硬かったのかしら・・・?
観るときの条件もありますよね。
しかし、この前「インビクタス」を観ているとき、
お腹が痛くなって焦りました^^;
一時も見逃すまいと、気力で最後まで持たせました(大汗)
nice!&コメント、ありがとうございます。

xml_xslさん。
こんばんは^^
いつもnice!をありがとうございます。

てぷこだんさん。
こんばんは^^
いつもnice!をありがとうございます。

トメサンさん。
こんばんは^^
いつもnice!をありがとうございます。

Bettyさん。
こんばんは^^
結構、賛否分かれているようです。
私は最初のツカミで引き込まれて、
最後まで鑑賞しました。
言いたいことが伝わり辛いかな?とはちょっと思ったりしました。
nice!&コメント、ありがとうございます。

takemoviesさん。
こんばんは^^
いつもnice!をありがとうございます。

heibayさん。
こんばんは^^
いろんなしがらみの中で、
作品を発表しなければならない、辛いところもあるのでしょうね。

時間も長いし、色んな要素が入っていましたが、
少しメッセージが伝わり辛いかな~、と思わなくもなかったです^^
いつもコメントをありがとうございます。
by てくてく (2010-02-23 00:31) 

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