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疑惑の影 [映画 *か]


疑惑の影 [DVD]
「疑惑の影」、観ました。

カリフォルニア・サンタローザに暮らすチャーリーは、平凡な日々に小さな不満を抱きながらも、家族に囲まれ平和に過ごしていた。
ある日、彼女と同じ名前を持つ叔父・チャーリーが訪ねてくることになる。
同じ名前ということもあって、チャーリーは叔父人一倍、親愛の情を抱いているのだ。
ところが叔父にはある疑惑が持たれていて、チャーリーの周りに不穏な空気が漂い始めるのだった・・・。
アルフレッド・ヒッチコック監督の1942年の作品。

チャーリーにとって、洗練された紳士で優しい叔父は自慢の存在。
叔父と連れ立って街を歩くと、女友達が羨ましそうな目線を送ってくる。
平凡な毎日が叔父の出現によってきらめいて見える。
叔父の姉であるチャーリーの母も、同じような気持ちを抱いているらしく、子供の頃の面影を思い出しては愛しさが増し、実業家となった弟が誇らしくもある。
一気に華やぎだした家の中だったが、突然とも思える2人組の男たちの訪問が風向きを変え始める。

チャーリーは叔父に恐ろしい嫌疑が掛けられている事を知ります。
それと並行するように、優しかった叔父の別の一面に気付き始めるのです。
一度、湧いた疑惑はチャーリーの心に影を落とし、チャーリーの異変を察知した叔父も影の面を濃くしていきます。
叔父に対する疑惑が徐々に確固たる物へと変化していく様子や、それを知ったチャーリーが母を思うあまり表に出せないジレンマなど、ジリジリさせながら観客を引きつけるところは流石の上手さ。

叔父の魅力にまいっているのは女性ばかりで、チャーリーの父親はじめ男性からの評価は意外に厳しく、子供からもあまり好かれてない、というのがミソでした。
叔父自身、ターゲットとして見なした相手には良い所を見せて油断させ、そうでも無い相手に対した時とは態度が違ってたりするんでしょうね、意識してない所でも。
そしてそれを感じ取るっている側も、無意識的だったりするんでしょうね。
この辺の描き方も面白いのかもしれません^^

古い映画なのでモノクロですが、そこが良い雰囲気を醸し出していました。

SHADOW OF A DOUBT  (1942)
 監督 アルフレッド・ヒッチコック
 テレサ・ライト ジョセフ・コットン マクドナルド・ケリー
 パトリシア・コリンジ ヘンリー・トラヴァース ウォーレス・フォード
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ラスト・オブ・モヒカン [映画 *ら]


ラスト・オブ・モヒカン [DVD]
「ラスト・オブ・モヒカン」、観ました。

1757年、北米大陸の領土をめぐりイギリスとフランスが戦火を交えていた頃。
モヒカン族の若者とイギリス指揮官の娘が恋に落ち、激動の時代を生き抜く姿を描いた歴史ロマン。
マイケル・マン監督、ダニエル・デイ=ルイス主演、1992年の作品。

この映画は過去に何度か観たことがあって、個人的にはお気に入りの作品です。
それでも暫らく振りの鑑賞でした~。
確か今回の前に観たのって子供がまだ小さかった頃だと記憶してるので、10年くらいは経ってる筈。
先日、BSで放送されていたので、“これはこれは!観ないかんやろっ”とすかさず録画。
久しぶりだったけどやっぱり面白かった、好きなものってあんまり変わらないんだなぁ^^

イギリス指揮官の娘・コーラとアリス姉妹は父親が駐屯する前線の砦へと向かっていた。
道案内である先住民・マグアはフランス軍のスパイであり、山深くに差し掛かる頃を見計らって仲間と共に襲撃を開始、イギリス兵士は次々に命を落とす。
その場に偶然居合わせたモヒカン族のホークアイ、父親のチンガチェック、弟のウンカスは姉妹を救い出すことに成功。
彼女らを砦まで送り届けるため、共に旅を始めたホークアイたちだったが・・・。

価値観のまったく違った二人が出会い、はじめは反発するもやがてお互いに強く惹かれ運命の恋に落ちる・・・というメロドラマの王道。
イギリスから未開の地へと足を踏み込んだお嬢様、しかし芯は強く理想も高い女性と、神秘的でしなやかな精神の持ち主である先住民族の青年(ホークアイは幼い頃に両親を亡くし、チンガチェックの養子となったためモヒカンの血は引かないが、魂はモヒカン族である。)が、行動を共にするうちに真心に触れ、育った環境や価値観を越えて愛し合うように。
行く手を遮る戦火、また他部族の執拗な追跡から逃れるうちに、2人の絆はより強く、確かなものになって行きます。

砲弾が飛び交う緊迫した戦場、まだまだ手付かずの大自然が残る大地の中で繰り広げられる物語。
軽やかに山野を駆け抜けるモヒカン族の姿も臨場感あり。
激動の時代を背景に、運命に翻弄されながらも一途に愛を貫く恋人たちの姿を描いた一大アクション・メロドラマです~。
とは言っても、実はホークアイ&コーラよりもウンカス&アリスのカップルの方が印象深いかも。
こちらのカップルは真に精神で結ばれた仲、というか永遠に汚れ無き魂のまま結ばれた・・・と言う感じがして、いつ観ても泣いてしまうのです。

それにしても久し振りに鑑賞したら、ちょっと複雑な心境になってしてしまった!
その昔は敵役のマグアが、ものっすごいオッサンに見えていた訳です。
オッサンの割に俊敏やな~、とか。
でも今回はそれ程のオッサンにも見えなかったし、それどころか意外と逞しく若かった事に驚いた~。
マグアを演じたウェス・ステューディは当時45歳、つまり私がその歳に近づいてしまってオッサンだと思わなくなってしまった・・・って事実!!ひえぇ~、フクザツ~。
チンガチェックなんてお爺さんだと思ってたのに!(シツレイな奴ですね^^;お許しを)
こちらもそんな爺さんでもなかったし・・・。

まさかこんな所で自分の歳を実感する羽目になるとは、思ってもみんかったですよ~(笑)

THE LAST OF THE MOHICANS  (1992)
 監督 マイケル・マン
 ダニエル・デイ=ルイス マデリーン・ストウ ジョディ・メイ
 ラッセル・ミーンズ スティーヴン・ウォディントン エリック・シュウェイグ
 パトリス・シェロー ウェス・ステューディ コルム・ミーニイ
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レポゼッション・メン [映画 *ら]


レポゼッション・メン ブルーレイ&DVDセット [Blu-ray]
「レポゼッション・メン」、観ました。

人工臓器の普及により長寿を金で買える近未来。
高額ローン滞納者には臓器の回収が余儀なくされていた。
腕利きの臓器回収人(レポ・メン)であるレミーは、非情な任務をこなす毎日を送っていたが・・・。
ジュード・ロウ主演のSFサスペンス。

ユニオン社は人工臓器の製造・販売で急成長した大企業。
ありとあらゆる臓器を開発し、患者への移植の際にはローン払いで対応している。
売る時には甘い言葉で勧誘、しかし滞納がかさむとレポメンの登場、となる。
この回収方法が容赦ない・・・、いきなり現われたかと思うと、あっと言う間に身体を開かれて臓器は回収される。
その後、患者がどうなろうと彼らはお構いなし、ただ回収のノルマに従って業務を遂行するのみ・・・。

レポメンの稼ぎ頭であるのがジュード・ロウ演じるレミー。
彼はかつては軍隊でかなりの暴れ者だったようで、その流れで退役すると今度はレポメン。
幼馴染のジェイクとは軍隊でもレポメンでも、コンビを組んで周りからも一目置かれている。
お互いに“仕事だから”と自身のやっていることを正当化しているが、刺激を求めているようにも見える。
しかしレミーの妻はレポメンの仕事にうんざりしていて、レミーに転職を望み、そのせいでギクシャクとした空気が流れていた。
家族の為に本気で転職を考え始めた矢先、レミーは事故により自らの身体に人工心臓を入れる羽目に。
やがてローンの滞納が積み重なり、レポメンから追われる立場になってしまうレミー。
その時初めて、自分がやってきた仕事について深く考え始めるのだった。

かなりグロいシーンが登場します。
血みどろで痛々しい所は辛抱が要りますが、物語としては皮肉が効いているし、アクションとしても中々面白く作られているかな、と思いました。
主役のジュード・ロウ、その相棒のフォレスト・ウィッテカー、ユニオン社社長にリーヴ・シュレイバーと一癖ある登場人物を上手く演じられる、実力を備えた出演者も揃っているし。
レミーと共に逃避行を続けるべスを演じたアリシー・ブラガも、セクシーさと妙に舌足らずな可愛さを混在させたキャラクターが魅力的でしたし。
音楽の選曲もセンスが感じられ、ミュージックビデオのようにスタイリッシュな映像も目を引きました。

けれども、如何せん、血なまぐさ過ぎる。
終盤のユニオン社に侵入するシーン、あれの前まではまだ我慢できたけど、あの侵入からデータ削除までの一連がとにかく血のり、血しぶき。
どうにも悪趣味に思えて、う~~ん、ちょっとダメかも・・・となってしまいました^^;

そして最後の最後、常夏の楽園でくつろぐシーンではすぐにピン!と来ました~。
前フリもさり気なくしてあったし、絶対に「未来世紀ブラジル」的パターンに違いないと。
後味は悪いけど、これは締め括りとしては悪くなかった。
それだけに、過度な血みどろが残念でした。
そこさえもうちょっと違っていたら、評価ももっと上がった気もしなくないんですよね~。

REPO MEN  (2010)
 監督 ミゲル・サポチニク
 ジュード・ロウ フォレスト・ウィッテカー リーヴ・シュレイバー
 アリシー・ブラガ カリス・ファン・ハウテン チャンドラー・カンタベリー 
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トロン:レガシー [映画 *た]


トロン:レガシー オリジナル・サウンドトラック
「トロン:レガシー」、観ました。

1982年に製作された「トロン」の続編。
前作で主役を務めたジェフ・ブリッジスが出演していることでも話題。
3Dで鑑賞。

28年前の「トロン」は未見です。
でもコンピュータグラフィックスを使った近未来を思わせる映像が、当時も話題となっていたことは記憶にしっかりと残っています。
とっても平面的な空間にラインがすーーっと引かれていくようなイメージが、私の頭にあった。
それが多分、あのバイクが走った後に出来る壁のような物だったのでしょうね。
今回の新作を観て“あぁ、この場面だったんだな~”と、ちょっと懐かしさを感じてしまいました。
妙なもんでそれと同時に、中学生の頃(当時)の記憶が思い出されたりなんかしてね^^

「トロン:レガシー」を観る前に、前作をレンタル・・・という事は今回しなかったです。
20年前、謎の失踪を遂げた父親の手がかりを見つけた息子が、父親が作り出したコンピュータの世界へと入り込んでしまい、そこに閉じ込められていた父親と巡り合い脱出を図る、というのが大まかなストーリー。
前作で主役を務めたジェフ・ブリッジスは20年の時を経た父親と、若き頃の姿のままのプログラム・クルーの二役を演じています。
クルーの時は肌のハリもあってツヤもいい、このCGは「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」でブラピを若返らせた、あの技術だそうです^^

息子のサムはコンピュータに入るや否や、色んなゲームへの参加を余儀なくされてしまいます。
円盤型ディスクをフリスビーのように投げ合って相手プログラムを破壊する対決やら、バイクのような乗り物に乗ってチームで対戦するバトルやら。
この辺りの映像は迫力もあったし、3D効果も遺憾なく発揮されていたと思います。
特にバイク戦は白とオレンジのラインが画面を駆け抜け、そこを縫うように走りながらバトルが繰り広げられ、目でも楽しめました。

しかし、私が楽しめたのはここまで。
この後の父子の対面を経てコンピュータ世界からの脱出までが、すごく長く感じてしまった^^;
途中2、3回ほど意識がなくなりかけた!
何でだろうな~?
とにかく父親のディスクを欲しがっているクルーの目を盗んで脱出口まで行くのは不可能、ディスクをクルーに渡してしまったら世界は破滅へと転がっていってしまう・・・って事は分かった。
それで今までの20年間は何も出来ずに手をこまねいていた父ちゃんと、父ちゃんを救いたい息子が力を合わせて脱出口を目指す、ここを畳み掛けるように見せて欲しかったけど、ちょっと失速気味だったかな~。
シンプルな物語の割に2時間越えはちと長すぎて、間が持たなかった感がありました。

プログラムを擬人化するのも分かるんですが、バーで飲んだり踊ったりで軽く“?”が浮かび、更にマイケル・シーンのキャラはやり過ぎな感じがして引いてしまいました^^;

思うに「トロン」に対する思い入れの差、みたいな物が出たような気がします。
かつて「トロン」を観た人が28年の時を経て、現在の技術で新たに生まれ変わった「トロン:レガシー」に感じるであろう感慨のようなものは、残念ながら私には浮かんで来ない訳で。
後はまぁ、好みの問題って事なんでしょうね~。
それでも本作は大画面&3Dで観てこそ生きる作品だと思うので、劇場で鑑賞出来て良かった、と素直に思っているのも事実です^^

TRON:LEGACY  (2010)
 監督 ジョセフ・コシンスキー
 ギャレット・ヘドランド ジェフ・ブリッジス オリヴィア・ワイルド
 マイケル・シーン ボー・ガレット ブルース・ボックスライトナー
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ロビン・フッド [映画 *ら]


ロビン・フッド (リドリー・スコット 監督、ラッセル・クロウ 主演) [DVD]
「ロビン・フッド」、観ました。

12世紀のイギリスを舞台に、伝説上の義賊ロビン・フッドが活躍する歴史スペクタクル。
「グラディエーター」のリドリー・スコット監督とラッセル・クロウがタッグを組む。

弓の名手として名高いロビン・フッドですが、彼についての詳しいことは知らずに鑑賞。
でもそんな事、全然問題じゃない、知らないんだったらこの映画を観てちょうだい、って感じ^^
どうして彼が後世に語り継がれる伝説の男になったのか、がよ~く分かる。
ロビン・フッドの存在自体は、複数のモデルを複合したものでそれが伝承されたらしい・・・つまり実在の人物では無いということみたいです。
が、ロビンは確かに生きていた、分裂しかけたイングランドを一つにまとめた男として、スクリーン上で堂々とその存在感を漲らせていました。

歴史の中にロビンを融合させることを、見事なまでに成功させていた。
戦乱の世、裏切りや画策が張り巡らされ多くの民が犠牲となる中、運命に導かれるように頭角を現すロビン・フッド。
一民兵であったロビンが騎士となり、自身の出自の秘密、民のために叫びを上げ自由を勝ち取るために戦う・・・というストーリーもまるで立て板に水の如く淀みがない。
140分という長さを全く感じさせない面白さでした。

そして戦闘シーンの迫力といったら!
中世の時代の戦闘方法、武器、鎧兜に剣に盾に・・・ものすごく忠実に再現されているのではないか、一大スペクタクルが目の前で展開され迫ってくるようでした。
砦や村の様子など、細部に至るまで手抜きした所がなく完璧で、観ていてゾクゾクしました。
これだよ、これ!映画の醍醐味、ここにあり!って感じ^^
一体どれ位の制作費が掛かったのか知りませんが、ここまで使って、そしてその使い方がホントに上等で間違いが無い。
流石、リドリー・スコット監督。分かってらっしゃる!^^

歴史物だと不勉強から取っ付きにくさを感じたりすることがままあるのですが、本作にいたってはその心配は無し。
とても分かりやすい話になっているので観やすい。
ロビン役のラッセル・クロウは勿論、脇を固める役者さんもみんな上手くてその点でも安定してる。
個人的に「グラディエーター」がドツボで、今まで何回も観てその度に号泣するのですが、あそこまでの重量感は無いかもしれないですが、かなり面白いことに違いはないです。

クライマックスの浜辺での戦闘シーンは圧巻です。
ロケーションが物凄い。
あのロケーションあってこそ。
物語を盛り上げるには持って来いの場所でした。
いったいどうやって撮ったのか、CGも多用してるんでしょうけど、大スクリーンで観る価値ありです。

ROBIN HOOD  (2010)
 監督 リドリー・スコット
 ラッセル・クロウ ケイト・ブランシェット マーク・ストロング
 ウィリアム・ハート マーク・アディ オスカー・アイザック
 ダニー・ヒューストン アイリーン・アトキンス ケヴィン・デュラント
 スコット・グライムズ アラン・ドイル マックス・フォン・シドー
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ザ・ロード [映画 *さ]


ザ・ロード [DVD]
「ザ・ロード」、観ました。

原因不明の天変地異により崩壊した文明社会。
終末を迎えた地上で、ひたすら南へと旅を続ける親子の姿を描く。
「ノーカントリー」のコーマック・マッカーシー原作。

すごく観たかった作品ですが驚くほど公開館数が少なかった。
この映画に限らず、近頃はそういう作品の方が多くて映画館から足が遠のきつつある。(単に出掛けるのが億劫に感じる自分がいて、ちょっと自己嫌悪なんですが^^;)
DVDリリースもあっと言う間なので、ついつい家でレンタル・・・ってなってしまいます。
近くの映画館ももうちょっとラインナップにひと工夫してほしい、なんて思ったり。
・・・と、ちょっと本題からズレてしまいましたね、映画の感想、行きます。

荒廃した世界、かつての文明社会は脆くも崩れ去り、後には灰色の世界が広がる。
天変地異から10余年、地球上のあらゆる動植物は消えゆき、人類もまた風前の灯。
残された人間が人間を食らう地獄と化した。
その中を南を目指して旅をする親子。
親子の過酷な道中を静かなトーンで描いた作品。

地球に何が起こったのか、その詳しい説明は描かれません。
とにかく何かが起きて文明は滅びた、その後パニックが起こったのは想像に難くなく、様々な形で人類は消えていった。
最初は食べ物をめぐり争いが起きただろうし、次第に醜くなる世界に絶望して自ら命を手放した者もいるし、そして飢狼と化した人間の餌食になった者も・・。
その辺の詳しい描写は無くとも、親子が歩く世界が全てを物語っているのです。

寒さと飢えと戦いながら歩を進める親子、人食いから隠れ逃れながら危険な道を行く。
父が息子に説くのは人間としての信念と尊厳、例えどんなに辛くとも人として大事なことを見失わずに生きる、と言うこと。
“私たちは火を運んでいるんだよ。”父は息子にそう語りかける。
どんなに醜い世でも生きて前に進もうとする父。

父親を演じるのはヴィゴ・モーテンセン。
悲壮感でビッシリと周りを包まれても、決して諦めない堅い信念を持った男を全身で表現。
しかし彼は終末期のヒーローではありません。
息子を守る為には他人を犠牲することも、食料を独り占めすることも厭わない。
この世界を生き抜くには至極あたりまえの非情さを持った人間。
超人的な武術も持たないし、弱きを助け悪を挫く救世主でもない。
(同時期に劇場公開されていたデンゼル・ワシントン主演の「ザ・ウォーカー」と似て非なる。)
彼が望むのは息子の命を明日に繋ぐこと、それ一点。

映画のトーンは静かだと思うのですが、圧迫感というか画面から出てくる重苦しさがジワジワと辛い作品でした。
父親の信念も痛いほど分かる、なんとしても子供を救いたい、という気持ちは。
その反面、こんな生き地獄を子供に見せて、地を這うような生活をさせて、それでこの先どうなるかも知れないのに、これがこの子にとって良いことなのか、父親のエゴにも思えて、彼に対する反発や悲しい思いも湧いてきたのも事実。

こんな悲愴な物語を淡々と観続けるのは堪らない・・・そう思っていた私。
その時、画面で“コガネムシが飛ぶ”というシーンが登場したのです。
初めて見た虫を手のひらに乗せ喜ぶ息子に「コガネムシだよ。」と教える父。
直ぐに飛んでいってしまった小さな1匹の虫が、生命が尽きつつある地上に微かな希望を与えたのです。
ずっとずっと先だけど、もしかしたら人類が平穏を取り戻せるかもしれない、と言う希望を。
ここで、やはり息子は生き抜いて人類の新たな未来を創造する一員にならねばならぬ、あぁ父親の信念は間違っていなかったのだ、と思えたのです。
このワンシーンがあったお陰で、今までの悲愴一辺倒から開放されたと言うか・・・。
上手く言えないけど、“イマイチかな?”と思っていた本作が“いやいやどうして、良い作品じゃない?”と変わる切欠になったんですね。

親子が南を目指したのは母親が“寒くないように南に行って”と言ったからだし、“火を運んでいる”っていうのも心に信念の火を持っているっていう意味だと思うのですが、その奥に何かの隠喩が隠されているのかもしれないな・・・なんて思ったりしたのですが、良くは解りませんでした。
原作を読んでみよう、と強く思った鑑賞後^^

THE ROAD  (2009)
 監督 ジョン・ヒルコート
 ヴィゴ・モーテンセン コディ・スミット=マクフィー シャーリーズ・セロン
 ロバート・デュヴァル ガイ・ピアース モリー・パーカー
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SPACE BATTLESHIP ヤマト [映画 *さ]


「SPACE BATTLESHIP ヤマト」ORIGINAL SOUNDTRACK
「SPACE BATTLESHIP ヤマト」、観ました。

TVアニメとして放送され人気を博した「宇宙戦艦ヤマト」を実写映画化。
監督は「ALWAYS 三丁目の夕日」の山崎貴、主人公・古代進を木村拓哉が演じる話題作。

当時、アニメは観ていたのですが、2つ上の兄にお供して・・・って感じでしたね~。
とにかくあの主題歌が大好きだった!
(エンディングの「真っ赤なスカーフ」も最初のトコしか覚えてないんだけど、いい曲でしたよね^^)
宇宙空間を舞台に繰り広げられる壮大な物語、今の技術をもってしてどのような映像世界を作り上げているのか、観に行って来ました。

「ALWAYS 三丁目の夕日」は実は未見だったりするのですが、VFXの凄さは話題になっていたと思います。
その山崎監督率いるチーム、今回のヤマトもなかなか頑張っていたんではないでしょうか?
もちろんハリウッドなんかと比べたら、やっぱり見劣りするのかもしれませんがそれを言ったら見も蓋も無い。
邦画としてはかなりの水準だと思うのでそこを評価したいな、と思いました。
宇宙を行くヤマトの雄姿といい、目まぐるしく動きながらの戦闘シーンといい迫力があった~。
邦画もこれからますます技術面で向上し、夢のある映画を沢山作ってくれるのではないかという希望を強くさせてくれる作品って気がしました。

役者さんはみんな大きめの演技をしてましたね、それで良いんだと思います。
あの世界観では自然な演技より、ちょっと大仰なくらいがいい。
個人的には尾形直人(久しぶりな気がしたけど、私が彼の出演作を見てなかっただけかな。)と池内博之がよかったです^^
あと、乗組員たちのスーツが懐かしさ全開、あのスーツはちっちゃい頃憧れたな~^^

アニメのストーリーの方はうろ覚えですが、映画の物語は忠実にそっていたのかな?
概ね好意的評価なんですが、ひとつだけ。
最後のシーン、古代進の決断に対しての森雪の反応とその後のメロドラマが長かった・・・^^;
雪の気持ちは十分解るけど、あそこはすがりつくんじゃなくて毅然と受け入れる姿で愛を表現して欲しかった。
長いよ~、と思ってたんだけど、どっかから鼻をすする音が聞こえたので、もしかしたら泣いてる人もいたのかなぁ。それとも風邪引いてたのかな^^;

ヤマトの主題歌は流れなかったですね。
劇中でBGMとしてドラマティックに流れていたのには興奮しましたが、ささきいさおさんの歌も聞きたかった!

SPACE BATTLESHIP ヤマト  (2010)
 監督 山崎貴
 木村拓哉 黒木メイサ 柳葉敏郎 尾形直人 高島礼子 堤真一
 橋爪功 マイコ 池内博之 矢柴俊博 波岡一喜 西田敏行 山崎努
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30デイズ・ナイト [映画 *数字・アルファベット]


30デイズ・ナイト プレミアム・エディション [DVD]
「30デイズ・ナイト」、観ました。

30日間太陽が昇らない極夜のアラスカに現われたヴァンパイア集団と住民たちの死闘を描く。

近頃ちょこちょことお目に掛かることが多くなってきたヴァンパイア物。
しかし本作は女子高生との甘いロマンス系ではなく、血に飢えたヴァンパイアが人間たちを次々に襲う恐ろし系。
製作にはサム・ライミの名前も。

アラスカ州バローは極夜の前日を向かえた。
30日のあいだ夜に包まれるバローを抜け出し、トロントで過ごす住人たちを乗せた最終の飛行機が出発すると、いよいよ太陽が沈み始める。
町に残った住人達は、長い夜そして深い雪と付き合いながら夜明けが来るのを待つのだ。
そんな折、飼い犬が殺されたり携帯電話が焼かれる出来事が起きる。
保安官のエバンは何やら不穏な空気を感じるのだが・・・。

陽の光が届かない孤立した町に、続々と姿を現すヴァンパイアたち。
主電源であるモーターも切られ、電気が通らなくなった闇の中、超人的な身体能力をもったヴァンパイアが人々を襲う映像は凍りました。
映像的にも色味を抑えた青白いトーン、町を俯瞰で捉えたシーンは寒々しく、惨さが伝わってきた。
こんな中では30日間、果たして人間が生き延びれるのか?疑問。

保安官のエバンは弟や奥さん(だったんですね、恋人かと思ってた)を含む数人の住民と共に、屋根裏部屋に身を潜めてヴェンパイアの目をごまかす事に成功するんです。
しかし高度な知能を持つ彼らは罠を仕掛けたりなんかして、住民を翻弄するのだった!
生き残りたかったら絶対に動かない方がいいと思う。
とりあえず安全そうな時を見計らって食料だけは確保して、あとは息を潜めて時を待つ。
でも動いちゃうんだよね~、絶対!出て行っちゃうんだもんなぁ、やっぱ。
出て行かなきゃ新たな展開も起きないし、映画として成り立たないからしょうがないんだけどっ(笑)ププッ。
エバンたちが“安全だから”と言って目指している場所がそれ程安全とも思えなかったし、ウロウロする方がよっぽどリスクが高い気がした^^;

そうは言ってもハラハラしましたよ~、かなり><;
つっこみ所はさて置いて、なかなか緊張感のある作品でした。
そして結構にグロいシーンもありまして、ピリピリと痛さを刺激する作品でもありました。
難なのはずっと夜の場面の連続なので、30日間という時間の長さをあんまり実感出来ない点かな。
時々“何日目”とかテロップが出るけど、あの状況で生き残るのに長いスパンは無理な気がする、せいぜい1週間くらいが実感を持たせられるラインだとは思う。

最初に町に訪れた謎の流れ者、この男がインパクトのある役者さんで、“待てよ、どっかで見たぞ~”と考えて思い当たりました。
「3時10分、決断のとき」でラッセル・クロウを崇拝する部下・チャーリーを演じたベン・フォスター!
今回もかなり迫真の演技。
なんだか良く解らない男だったのですが、明るい内に携帯を焼いたり犬を殺したりしてヴァンパイアの手助けをしたのがあいつだったって事ですね?

あと、この映画を観た真の目的はジョシュだったのですが^^*、途中の血しぶきシーンはさて置き、ラストにかけては(あんな姿になっちゃったけど^^;)切なかったですよね~。
彼はやっぱり母性本能を擽るし、最後のキスシーンはグッと来ました。
個人的にはあのシリーズよりずっと切なかった、なんて言ったら怒られる^^?

・・・で、この作品の監督さん、あのシリーズ最新作「エクリプス/トワイライト・サーガ」の監督でもあるんですね!へぇ~。へぇ~。

30 DAYS OF NIGHT  (2007)
 監督 デヴィッド・スレイド
 ジョシュ・ハートネット メリッサ・ジョージ ダニー・ヒューストン
 ベン・フォスター マーク・ブーン・ジュニア マーク・レンドール
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北北西に進路を取れ [映画 *は]


北北西に進路を取れ 特別版 [DVD]
「北北西に進路を取れ」、観ました。

人違いをされ事件に巻き込まれた男が、ピンチを切り抜けながら事件の謎と解決に挑むサスペンスアクション。
アルフレッド・ヒッチコック監督作品。

広告会社社長のロジャー・ゾーンヒルはホテルのロビーで“ジョージ・キャプラン”という男と勘違いされ、銃を持った男達に拘束、郊外の屋敷に連れ込まれる。
屋敷では一味のボスと思しき男が現われ、怪しげな仕事の依頼をする。
いくらロジャーが人違いだと主張しても聞き入れず、挙句、仕事を拒否したロジャーを自動車事故に見せかけて殺害しようと目論む。
間一髪、危機を逃れたロジャーは警察で被害を訴えるが聞き入れて貰えず、半信半疑の警官を伴って訪れた屋敷でも上手く丸め込まれてしまう。
果たして“ジョージ・キャプランとは何者なのか”、謎を追うロジャーは新たな事件に巻き込まれていくのだった・・・。

ケイリー・グラント扮する主人公が謎の人物“キャプラン”に間違われ、右往左往の事態に陥ります。
観終わった後、“あれ、なんでキャプランと間違われたんだっけ?原因は?”とそれがよく思いだせないんですよね~^^;
確認しようにも返却した後だったのでそれも出来ず。
とにかく勘違いの人違いで手違いが起こった、って感じ?^^;
どう説明しようが聞き入れて貰えず、悪者グループはロジャーをキャプラン扱いすることを止めません。
ロジャーの方はロジャーで、よしこうなったら本物のキャプランを捕まえてやろうと自ら首を突っ込んで行っちゃう。
あれよあれよ言う間に、まるでドミノ倒しの勢いで騒動に巻き込まれてしまうロジャー。
切欠はどうあれ、途中からはおのずから渦中に飛び込んで行ってる状態でしたね~。

まるでスパイさながらの活躍を見せるロジャー、にわか仕込みのスパイとは思えぬ機転に、運の良さも手伝って次々ピンチを切り抜けていきます。
列車あり、飛行機あり、そして大統領の石像でお馴染みのラシュモア山での逃亡劇など、アクション娯楽としての側面が強い作品でした。
思わぬところでロジャーが殺人容疑をかけられる経緯や、スパイ・ロジャーの活躍など、ちょっと安易だったり上手く行き過ぎ?、なんて所がなくもなかったり・・・^^でも、まぁ、堅いことは言わずに観たい。
スパイ物のお約束、美女とのロマンスも勿論あり。
ケイリー・グラントのダンディさが、古きよき時代の映画の風情を感じさせました。

NORTH BY NORTHWEST  (1959)
 監督 アルフレッド・ヒッチコック
 ケイリー・グラント エヴァ・マリー・セイント ジェームズ・メイソン 
 ジェシー・ロイス・ランディス マーティン・ランドー レオ・G・キャロル 
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シェルター [映画 *さ]


シェルター [DVD]
「シェルター」、観ました。

多重人格と思われる男性患者の担当になった精神分析医を見舞う、驚愕の出来事を描いたホラー・サスペンス。

カーラは解離性同一性障害(多重人格)について懐疑的な意見を持つ精神科医。
同じ分野の研究者である父親から、多重人格と思われる患者・デヴィッドの分析を依頼される。
デヴィッドを診察するうちにカーラは自身の信念が揺らぎ始めるのを感じる。
彼の調査を進めるカーラは、驚きの真実へと導かれていくのだった・・・。

思った以上にホラー風味が強くておっかなビックリでした^^;
多重人格を信じていない医師が、患者の症状が果たして本物なのかそれとも偽りなのか、その真偽の程を確かめようと心理バトルを繰り広げるサスペンスかな?なんて思っていたのです。
でもデヴィッドの身辺調査を始めたカーラが、実はデヴィッドは25年前に死亡していて、その死に不穏な事件が関わっていると判明した辺りから、ジワジワとホラー的な雰囲気が立ち込めてきて、ついつい肩に力が入ってしまいました。

ジュリアン・ムーアってちょっと毛色の変わったサスペンスというか、作品選びが面白い女優さんですね。
本作もそんな1作だと思えます。
当初は頭の固そうで自分の信念は変えない・・・みたいな感じだったのが、人智を超える出来事に対峙し魅入られたように引き込まれていく人物を演じていて、彼女と一緒に謎を紐解く感覚でした。
患者のデヴィッドを演じたジョナサン・リス・マイヤーズは「パリより愛をこめて」の記憶も真新しいんですが、今回は首が折れちゃいそうなのけ反りポーズで熱演でしたね~^^;
あの“ボキボキ”いう音が生理的に受け付けられなくて、怖さ増しました。

概ね引き込まれて鑑賞したし、また怖さも程よく感じられたので、まずまずの出来ということでしょうね^^
でも・・・(ネタバレ・反転します。 あの神父さんは過去の恨みを晴らしたくて出てきたんですよね? だったら何故、あのお婆さんと対決しないのか“?”でした。 カーラという外堀から最終的にはあのお婆さんを突き止め、そして・・・と思ったらそうでもなかったし。 お婆さんの力が強すぎるから?ちょっと、よく分からなかった。 あと、デヴィッドの25年前の事件って結局、あの神父さんの仕業なんですかねぇ。
・・・なんて、考え出したら“?”がいっぱい浮かんできちゃいました~^^
あんまり深く考えちゃダメかな、こういうジャンルは。

SHELTER  (2009)
 監督 モンス・モーリンド
 ジュリアン・ムーア ジョナサン・リス・マイヤーズ ジェフリー・デマン
 フランセス・コンロイ ネイト・コードリー ブルックリン・ブルー
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