SSブログ

ザ・ロード [映画 *さ]


ザ・ロード [DVD]
「ザ・ロード」、観ました。

原因不明の天変地異により崩壊した文明社会。
終末を迎えた地上で、ひたすら南へと旅を続ける親子の姿を描く。
「ノーカントリー」のコーマック・マッカーシー原作。

すごく観たかった作品ですが驚くほど公開館数が少なかった。
この映画に限らず、近頃はそういう作品の方が多くて映画館から足が遠のきつつある。(単に出掛けるのが億劫に感じる自分がいて、ちょっと自己嫌悪なんですが^^;)
DVDリリースもあっと言う間なので、ついつい家でレンタル・・・ってなってしまいます。
近くの映画館ももうちょっとラインナップにひと工夫してほしい、なんて思ったり。
・・・と、ちょっと本題からズレてしまいましたね、映画の感想、行きます。

荒廃した世界、かつての文明社会は脆くも崩れ去り、後には灰色の世界が広がる。
天変地異から10余年、地球上のあらゆる動植物は消えゆき、人類もまた風前の灯。
残された人間が人間を食らう地獄と化した。
その中を南を目指して旅をする親子。
親子の過酷な道中を静かなトーンで描いた作品。

地球に何が起こったのか、その詳しい説明は描かれません。
とにかく何かが起きて文明は滅びた、その後パニックが起こったのは想像に難くなく、様々な形で人類は消えていった。
最初は食べ物をめぐり争いが起きただろうし、次第に醜くなる世界に絶望して自ら命を手放した者もいるし、そして飢狼と化した人間の餌食になった者も・・。
その辺の詳しい描写は無くとも、親子が歩く世界が全てを物語っているのです。

寒さと飢えと戦いながら歩を進める親子、人食いから隠れ逃れながら危険な道を行く。
父が息子に説くのは人間としての信念と尊厳、例えどんなに辛くとも人として大事なことを見失わずに生きる、と言うこと。
“私たちは火を運んでいるんだよ。”父は息子にそう語りかける。
どんなに醜い世でも生きて前に進もうとする父。

父親を演じるのはヴィゴ・モーテンセン。
悲壮感でビッシリと周りを包まれても、決して諦めない堅い信念を持った男を全身で表現。
しかし彼は終末期のヒーローではありません。
息子を守る為には他人を犠牲することも、食料を独り占めすることも厭わない。
この世界を生き抜くには至極あたりまえの非情さを持った人間。
超人的な武術も持たないし、弱きを助け悪を挫く救世主でもない。
(同時期に劇場公開されていたデンゼル・ワシントン主演の「ザ・ウォーカー」と似て非なる。)
彼が望むのは息子の命を明日に繋ぐこと、それ一点。

映画のトーンは静かだと思うのですが、圧迫感というか画面から出てくる重苦しさがジワジワと辛い作品でした。
父親の信念も痛いほど分かる、なんとしても子供を救いたい、という気持ちは。
その反面、こんな生き地獄を子供に見せて、地を這うような生活をさせて、それでこの先どうなるかも知れないのに、これがこの子にとって良いことなのか、父親のエゴにも思えて、彼に対する反発や悲しい思いも湧いてきたのも事実。

こんな悲愴な物語を淡々と観続けるのは堪らない・・・そう思っていた私。
その時、画面で“コガネムシが飛ぶ”というシーンが登場したのです。
初めて見た虫を手のひらに乗せ喜ぶ息子に「コガネムシだよ。」と教える父。
直ぐに飛んでいってしまった小さな1匹の虫が、生命が尽きつつある地上に微かな希望を与えたのです。
ずっとずっと先だけど、もしかしたら人類が平穏を取り戻せるかもしれない、と言う希望を。
ここで、やはり息子は生き抜いて人類の新たな未来を創造する一員にならねばならぬ、あぁ父親の信念は間違っていなかったのだ、と思えたのです。
このワンシーンがあったお陰で、今までの悲愴一辺倒から開放されたと言うか・・・。
上手く言えないけど、“イマイチかな?”と思っていた本作が“いやいやどうして、良い作品じゃない?”と変わる切欠になったんですね。

親子が南を目指したのは母親が“寒くないように南に行って”と言ったからだし、“火を運んでいる”っていうのも心に信念の火を持っているっていう意味だと思うのですが、その奥に何かの隠喩が隠されているのかもしれないな・・・なんて思ったりしたのですが、良くは解りませんでした。
原作を読んでみよう、と強く思った鑑賞後^^

THE ROAD  (2009)
 監督 ジョン・ヒルコート
 ヴィゴ・モーテンセン コディ・スミット=マクフィー シャーリーズ・セロン
 ロバート・デュヴァル ガイ・ピアース モリー・パーカー
nice!(9)  コメント(5)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。