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扉をたたく人 [映画 *た]


扉をたたく人 [DVD]
「扉をたたく人」、観ました。

孤独な初老男性とシリアから移住した青年の交流を、ニューヨークを舞台に描いたヒューマンドラマ。

素敵な映画でした~。
じんわりとやさしさが沁みてくるような、そしてもう一方ではやる瀬無いほろ苦さも込み上げる・・・そんな想いに揺さぶられる作品。
大人の映画でした。

大学教授のウォルターは、妻に先立たれてからというもの孤独な生活を送ってきました。
必要以上に人と接することを控えて暮らしている、そんな風に見えます。
大学の授業にしても、何年間も同じ内容の繰り返しで、授業の年間計画書を提出する時には修正液で年度だけを書き変えて提出しようとするくらい。
職業柄、付き合いもあるだろうけれど、きっと誰とも深くは付き合わずにいて、多分周りの同僚や生徒たち、ご近所さんなんかも、ウォルターに踏み込んだ付き合いをしようとしないんでしょうね。
そういうのって、やっぱり伝わるものです、“あっこの人、近寄るなオーラ出してるな”って・・・。
だからウォルターにしてみたら、そんな状態でもある意味、居心地良いのかも知れないです。

こんなウォルターですが、唯一新しく始めようとしている事があって、それがピアノの演奏。
しかし思うように指は動かず、ピアノ教師からは“その歳で始めるのには無理がある”みたいな事を言われてしまいます。
おまけにまるで子供に言い聞かせるような教え方をされ、子ども扱いされたと思ったウォルターは即座に彼女をクビにしてしまうのです。

そんな折、大学から学会への出席を命じられたウォルターはニューヨークへ出向き、かつて妻と暮らしていたアパートに滞在するため、鍵を開けて部屋に入ります。
このアパートにはもう何年も訪れていませんが、れっきとしたウォルターの持ち物。
ところが誰も居ない筈の部屋に、人が暮らしていて驚くウォルター。
シリア人のタレクとセネガル出身のゼイナブという移民のカップルが、何故か手違いでこの部屋を契約したというのです。
夜中に行くあてもない二人を見かねて、数日部屋にいることを許したウォルターでしたが、この出会いが彼の人生に新しい価値観をもたらすことになるのでした。

タレクという青年はジャンベという楽器の奏者、ジャンベというのは西アフリカの民族楽器で足の間に挟んで叩く太鼓。
素手で叩いて演奏するのですが、このリズムがウォルターの琴線に触れるのです。
そうか、ウォルターは音楽が好きなんですね、ピアノは無理と言われていたけど、この太鼓はウォルターに合っているのかもしれません。
人当たりの良い好青年のタレクは、すんなりとウォルターが作る壁を越えてしまいます。
タレクから教わりながらジャンベを叩くうちに、忘れていた充実した時間を取り戻していくウォルター。
しかし、不法滞在者であるタレクが逮捕、収監されてしまい・・・。

今まで惰性で生きてきたようなウォルターの人生が、人との出会いによって新たな輝きを放ち始めます。
この映画を観ていて、やはり人と人との繋がりの大切さを実感しました。
ふとしたきっかけで出会った人と人が、刺激を受けながら、励ましながら、お互いを知り合いながら信頼関係を築いていく、そんな姿を丁寧に描いていました。
ウォルターを演じたリチャード・ジェンキンスをはじめ、タレクやその母親など、静かながらも内に秘めた誠実さを上手く表現した演技が素晴しい。
9・11以前と以降ではガラリと変わってしまった移民たちへの措置など、アメリカが抱える現在の姿も織り込まれていて興味深くもあります。

少しずつ変わっていくウォルターの心に添うように、じっくりと鑑賞。
ラストのショットでは、最初とは大きく変化したウォルターの姿を見ることができます。

THE VISITOR  (2007)
 監督 トム・マッカーシー
 リチャード・ジェンキンス ヒアム・アッバス ハーズ・スレイマン
 ダナイ・グリア マリアン・セルデス マギー・ムーア
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てくてく

xml_xslさん。
こんばんは^^
いつもnice!をありがとうございます。

toramanさん。
こんばんは^^
いつもnice!をありがとうございます。
by てくてく (2010-04-22 21:03) 

hash

>やさしさが
>ほろ苦さも
映画全体を通して、こうした感情が伝わってくる作品でした。
映画を観る喜びを再認識させられます。
by hash (2010-04-22 23:29) 

ます

何歳になっても、人との出会いは大切にしたいですね。
by ます (2010-04-23 15:36) 

てくてく

ほりけんさん。
こんにちは^^
いつもnice!をありがとうございます。

hashさん。
こんにちは^^
そうですよね~、静かだけど
伝わるものが多い作品でした。
こちらの感情に訴えかけるというか・・・。
映画を観る喜び、感じますね^^
nice!&コメント、ありがとうございます。

タケルさん。
こんにちは^^
いつもnice!をありがとうございます。

dorobouhigeさん。
はじめまして、こんにちは^^
nice!をありがとうございます。

PENGUINGさん。
こんにちは^^
いつもnice!をありがとうございます。

ますさん。
こんにちは^^
人から受ける刺激というのが、
喜びを与えたり、
新たな自分を発見するきっかけになったりするんですね。
出会いは貴重ですね^^
nice!&コメント、ありがとうございます。

よーじっくさん。
こんにちは^^
いつもnice!をありがとうございます。
by てくてく (2010-04-24 17:53) 

よーじっく

こんばんはぁ(^^)/
ウォルターにとって、確立された生き方だったはずなのに
それを急転換させる「出会い」が、しみじみと迫ってきました。
人を変える力を持つ「出会い」。映画に時々現れて
感動させてくれる題材ですね。特に主人公が若者ではなく
初老だと、かなり強烈に伝わってくるのも、映画の不思議な
魅力だと思います。
by よーじっく (2010-04-24 22:42) 

non_0101

こんばんは。
心に残る作品でしたね。
リチャード・ジェンキンスのラストの演技に泣かされました(T_T)
切なかったです~☆
by non_0101 (2010-04-25 02:28) 

てくてく

よーじっくさん。
こんにちは^^
この映画には「出会い」がしっかりと刻まれていましたね。
その出会いによって様々な思いに揺れる人たち・・・。
静かな映画だったからこそ、
逆に伝わるものが多かった作品です。
とってもいい映画に出会えると、ほんとに嬉しいですよね^^
nice!&コメント、ありがとうございます。

nonさん。
こんばんは^^
リチャード・ジェンキンスの演技は良かったですね^^
いぶし銀・・・って感じ。
ラストのショットも胸に迫るものがあったし、
唯一、ウォルターが声を荒げたシーンも
泣かされました!
nice!&コメント、ありがとうございます。
by てくてく (2010-04-25 18:13) 

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